gigiのブログ

国際結婚の末の家族生活の日々

ある知り合いの話

子どもの学校が終わると、多くの親たちはその足で近くの公園へ行き、子供たちを遊ばせていた。そして大人たちは井戸端会議で時間を潰すのだった。


小さい町なので皆顔見知りではあるが、その中でも自然とグループができる。そうした中で知り合った気の合う若いお父さんと時々話をするようになった。


ある週末、ルームメイトは子どもと二人で公園へ行った時にそのお父さんに会い、たわいもない日常を話し合う中で、自分が今、依存症治療をしている事をその若いお父さんに打ち明けたことがあった。


そのお父さんは真剣にルームメイトの話を熱心に聞き、アドバイスをくれた。そして何と、その若いお父さんの父親も、アルコール依存症であることを告げてきたという。


この若いお父さんは、知識が豊富、明るく性格も良く好青年な印象。可愛いがキャリアウーマンの妻を持ち、だからと言ってインテリ感を見せることなく、二人ともこなれた感じ、肩の力が抜けた自然体な夫婦。二人の子供達はまさにエンジェルだった。そんな彼の実父がアルコール依存症とは本当に驚きだった。


ルームメイトはわたしにその時のことを話してくれた。そのお父さんがまだ学生時代、十九の頃、実母に離婚を勧めたそうだ。そうしてこの母はアルコール中毒で依存症の夫と縁を切り、新たな人生を始めた。


一方、年を取った実父は今でもアルコールに溺れながら何とか生きているという。毎日、何をするでもなく、近所の飲み屋に行ったりそこで会う人と話をしたり。


この若いお父さんは、今は奥さんと二人のかわいい子供に恵まれ幸せな家族生活を送っているが、幼い頃の苦く辛い思い出は永遠に忘れることはない。家族との幸せな毎日を送る中でも、何かのきっかけでその苦い思い出は蘇る事があるのだという。


「こんなにかわいい孫が二人もできたというのに、会うことができない哀れな人間なんだ、あのオヤジは。」


と涙を浮かべたそうだ。


実父でありながら、もう他人、というように少し虚しげに語るのだった。それでも時々実父の様子を見にいくのだそう。どんなことがあっても息子とオヤジの関係というものは、生涯変わることなく続くのだろうか。

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