gigiのブログ

国際結婚の末の家族生活の日々

回想 〜 ICUで目覚める

目が覚めた。


唇が異常に乾燥している。


少しずつ目に映るものから状況を把握するわたし。


「生きている」


と、心の中で声がした。


体はずっしりと重く、首を少し動かせる程度だった。


ICUといってもベットが20台くらいある大部屋で、とても明るかった。


目を細くあけたままぼーっとしていると、看護士と思われる女性がわたしのベットに寄ってきた。何かをチェックして消えていった。


わたしは目を閉じて眠った。


時間は過ぎていく。



何かを感じて目覚めると、そこには他の看護士がまた何かをチェックしている。


そうして更に時間は過ぎていった。



誰かに起こされたかのようにして目をあけると、そこには何となく見覚えのある顔があった。緑色のかっぽう着のようなガウンにシャワーキャップのようなものを被り、歯を出しニコニコしてわたしを見ている。しばらくその顔を見続け、ようやく彼だと気が付いた。面会に来たのだった。


わたしは声も出せず、ただ涙だけが溢れ続け、涙はこめかみをつたい、耳の中へ流れ込んでいくが、まっすぐに上を向いて寝たまま動けないわたしは、耳に入った涙が気になるも、どうすることもできなかった。



知らない間にまた眠っていた。今度は巨体の男性看護士が血圧を測りにきたのか、注射しにきたのか、右上腕部にきつくゴムバンドを縛って何かしていた。処置が終わると巨体の看護士はゴムバンドを取らずに去っていった。


気力体力が無いながらも、このいい加減な看護士に失望の気持ちを抱いた。命を救ってくれた病院の人達、なのに、何か不具合があれば失望や苛立ちを覚えてしまう哀れな自分がいた。


声を出す力はなく、もうろうとしていたが、手や指に変な圧を強く感じていた。強く絞められたゴムバンドの部分はどんどん痛くなっていく。


わたしが外国人だから適当に扱われているのか、それとも単にこの看護士が出来の悪いやつなのか、軽い怒りを持ちつつ、何も抵抗できないわたしは目を閉じた。



それからどれくらい時間が経過したのかは分からないが、数人の気配を感じて目を開けると、そこには手術を担当した女医と看護師たちがいた。女医は、ゴムバンドのせいで自分の右手右腕が真っ青くなり血が滞って冷たくなっているのに直ぐに気づき、ゴムバンドを取り払ってわたしの右手を暫くの間もみほぐしてくれた。本当に感謝してもしきれない女医の方。


手術から二日が過ぎ、経過も良好と判断され、わたしは一般病棟へ移ることになった。

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