gigiのブログ

国際結婚の末の家族生活の日々

引っ越し

私たちは住む場所を変えることになった。都心から八十キロメートル近く離れた、駅も無い小さな町の暮らしにはこれ以上耐えられなかったし、バイリンガル、いやトレリンガルになろうとしている子どもの成長や可能性を狭めたくなかった。


この小さな町は昔から住んでいる人たちが牛耳っていて、その人達とうまくやっていけなければ仲間外れにされ、他の町で生まれ育ったルームメイトと外国人のわたしは、村八分同然である。


そして何よりもこの町での思い出や辛かった毎日を全て忘れたかった。でも、ここの大自然はとても気に入っていた。少し歩けば、なんの音もしない静かな草原と遥か彼方に山々を見ることができたから。


何度となくこの景色を見ながら、今の生活や過去の自分、どうしてこんな所まで辿り着いてしまったのだろう、などと自分と向き合った。



わたしは少しでも街に近い地域に引っ越したいとその思いをルームメイトに伝え、時間を作って家探しを始めたのだった。彼も同意してくれて、久々に二人協力して其々に時間を作り、物件を見て回った。



引っ越しをするタイミングは、後になって思えば驚くほどに完璧だった。学校の修了式が終わった6月下旬に、一気に引っ越した。住んでいた持ち家の借主もちょうどいい具合に見つかった。


子どもの転校先は新居から歩いて直ぐのところに編入が決まり、偶然見つけたダンス教室のサマースクールに子どもを預かってもらうこともできた。持ち家にほとんどの家具を置いてきたので新居には何もなく、しばらくキャンプのような生活が続いた。


気持ちを切り替えて新生活を始めるには丁度良かった。昔の家にある家具を見れば、いらぬ事を思い出すだけだ。子どもは昔のクラスメートと毎日会えなくなることを残念がっていたが、新しい生活を私たちと共に楽しんでくれたと思う。というか、幸いにも彼女は全てにおいてポジティブなのだ。


たまに以前に住んでいた町へ家族で行き、前の学校のママパパ友に会って話をしたりしたこともあった。子どもはクラスメイトだった友達と遊び、大人達も会話に花が咲いた。その一方で、帰り道の車中でほぼ毎回と言っていいほど、ルームメイトがちょっとしたことでキレて急に癇癪を起こすのだった。


昔のことが甦り、色々なことが抑えられなくなるようだ。さっきまであんなに楽しそうにみんなと話していたのに、別人のように怒り出す。理由の分からない不安感や酒を飲みたい欲求、酒を止め始めた頃のイライラ、ドラックへの想いが、彼の脳から心と体へ流れていく。


環境を変えて正解だった。

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